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最高裁判所第一小法廷 昭和37年(あ)2173号 判決 1964年1月23日

主文

本件上告を棄却する。

当審における未決勾留日数中三五〇日を被告人金碩謙の本刑に算入する。

当審における未決勾留日数中三〇〇日を、被告人金相謙に対する第一審判決判示第二の罪の刑に算入する。

理由

弁護人海野普吉、同長岡邦の上告趣意第一点は、事実誤認の主張であり、同第二点は、量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

弁護人藤井亮の上告趣意第一は、単なる法令違反の主張であり、同第二は、量刑不当の主張であって、同四〇五条の上告理由に当らない。(なお論旨第一において法令違反をいう点は、被告人金相謙に対する第一審判決の刑は二個存するところ、原判決が原審の未決勾留日数のうち一三〇日を第一審判決の刑に算入する旨判示しているが、右判示はその二個の刑のいずれに、いかに算入するのか不明であるとして、原判決の違法をいうのである。しかし本件におけるごとく被告人に対し二個の刑が言渡された場合の未決勾留日数の裁定通算については、未決勾留日数の裁定通算を定めた刑法二一条の法意に照らし、まず勾留状が発せられた罪に対する刑を本刑として未決勾留日数中通算すべき日数をその刑に算入するものと解するを相当とする((大正九年(れ)第二〇一号同年三月一八日大審院判決、刑録二六輯一九五頁、昭和二八年(あ)第五〇四七号、同三〇年一二月二六日最高裁判所第三小法廷判決、刑集九巻一四号二九九六頁参照))。原判決の未決勾留日数の算入に関する判示は、その表現は必ずしも明瞭とはいい難く妥当を欠く点はあるが、その趣旨は、前記説示と同趣旨のものと解すべきである。本件においては、記録によれば、被告人金相謙に対しては、昭和三六年二月二三日大分地方裁判所から判示第二の罪を被疑事実として逮捕状が発せられ、翌二四日右逮捕状が執行され、同月二七日同裁判所判事が発した勾留状により右被疑事実について勾留された上、同年三月一七日該被疑事実につき同裁判所に公訴が提起され、同月一二日被告人は保釈されたが、同三七年二月二八日同裁判所において第一審有罪判決が言渡された結果、右保釈は失効し、被告人は即日収監され、同日控訴を申立て、以来同年八月一〇日福岡高等裁判所において原判決が言渡されるまでの間引き続き判示第二の罪についての前示勾留が更新されたことが認められる。従って本件においては、判示第二の罪の懲役二年の刑を本刑として、これに原審における未決勾留日数中一三〇日を算入することとなるのである。されば原判決には所論のごとき違法ありとなすことはできない。)

よって、同四一四条、三九六条、刑法二一条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 斎藤朔郎 裁判官 長部謹吾)

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